マンションの防災対策② 予測不能な大地震。起こる前に備えておきたいことは?
日本およびその周辺で人間の体に感じる「有感地震」が発生する回数は、1年間に約1000回~2000回程度。1日平均にすると約3回~6回の地震が発生しています(※1)。また、「国土交通白書2020(※2)」の中では、マグニチュード8~9クラスの大地震が30年以内に発生する確率は70~80%とされており、特に太平洋沿岸の広い地域で「南海トラフ巨大地震」が発生する可能性が高まっていることが報告されています。世界有数の地震大国と呼ばれている日本では、いつどこで大きな地震が発生してもおかしくありません。そこで今回のジオプラットでは《マンションの防災対策》2回目として『大地震が起こる前にやっておきたい備え』についてご紹介します。
東日本大震災では、マンションの「致命的な被害」はゼロだった
日本の地震観測史上最大規模となった東日本大震災は、マグニチュード9~9.1、最大震度7という巨大地震でしたが、被災地域に建つ東北6県・関東1都6県のマンション調査を行ったところ、「震災の被害なし」が81.23%、「軽微な被害」が16.13%、「小~中程度の被害」が2.64%となっており、大破などの「致命的な被害」は0件であったことが報告されました(※3)。
マンションの場合は、1981年に施行された「新耐震基準」に基づき「震度6強から7に達する程度の大規模地震でも倒壊を免れる水準」が義務付けられているため、一般的な戸建て住宅と比較すると地震の揺れに強い建物構造になっています。しかし、大きな課題となるのは住戸内で発生する災害について。「家具の転倒による死傷」などの一次災害や、「ライフラインの停止」などの二次災害が想定されるため、こうした災害リスクへの備えが「各家庭」で必要になることを常に意識しておきましょう。
大地震が発生する前にやっておきたい『自助』への備え
災害時には「3つの助力」が不可欠となります。1つめは自らを守るための「自助」、2つめはご近所同士や地域で助け合いを行う「共助」、3つめは政府や自治体からの公的な支援を受ける「公助」で、大きな地震が発生したときは、まず「自助」によって自分自身や家族の安全を守らなくてはいけません。日ごろから以下のような「自助への備え」を行っておきましょう。
①防災備蓄品をローリングストックする
ガスや電気などのライフラインが停止したとき、最も困るのは「水」。1人あたり「1日3リットル」を目安に「最低3日分」の飲料水を常に用意しておきましょう。また、ビスケットや板チョコ、缶詰などの「非常食」についても、日常生活の中で消費しながら随時補充していく「ローリングストック」を心がけましょう。
万一の避難を想定し「非常用持ち出し袋」の中身や持ち出すべきアイテムもしっかりと確認を。健康保険証や現金などの貴重品、懐中電灯、携帯ラジオ、携帯充電器、防寒や簡易トイレにも使えるビニール袋のほか、メガネ、薬、紙おむつ、生理用品、入れ歯といったパーソナルなアイテムは避難所でなかなか手に入らないため、各自持ち出しが必要になります。
②家具の置き方を工夫する
家具の転倒を防止するために、市販の転倒防止伸縮棒や耐震マットなどを使って家具を固定しておきましょう。また、寝室や子ども部屋には、背の高い家具を置かないこと。万一家具が転倒したときに出入口が塞がれないよう、家具の向きや配置についても工夫しましょう。
③自宅避難に必要なアイテムを用意する
マンションの場合は建物の倒壊リスクが少ないことから、地震発生後には「自宅避難」をするケースが多くなります。しかし、ライフラインの復旧には、電気が6日、上水道が30日、ガス(都市ガス)が55日(※4)、その期間を想定して必要なアイテムを揃えましょう。「カセットコンロ」や「携帯トイレ」「ウェットティッシュ」のほか生活用水も必要になるため、バスタブには日ごろから残り湯をためておく習慣を。また、生活用水を無駄に使う回数を減らせるように、使い捨てできる「紙皿・紙コップ・割りばし」なども用意しておくと良いでしょう。
万一のときに心強い『マンション内共助』。
日ごろから良好なご近所づきあいを心がけよう
防災対策を考える上で、なんといってもマンションが心強いのは「マンション内共助」が可能になること。特に近年の新築分譲マンションの場合は、共用部に「防災倉庫」を設置した物件が増えており、非常用発電機やマンホールトイレ、炊き出し用かまど、投光器、担架、救助工具セットなど各家庭では保管困難な「大型防災備品」がストックされているため、共助活動をスムーズに行うことができます。
ただし、円滑な共助活動のためには住民同士のサポートが欠かせません。いざというときに率先して共助活動が行えるよう、日ごろから「良好なご近所づきあい」を心がけておくことも大切です。加えて、万一の避難経路や、マンション管理会社・管理組合の緊急連絡先を確認。マンション内で防災訓練が行われる場合は積極的に参加し、防災倉庫に保管されている備品の使い方についてもあらかじめ習得しておきましょう。
もしも大地震が発生したら・・・慌てて忘れがちな注意ポイント
「スマートフォンの緊急地震速報が突然鳴ってカラダが硬直してしまった」という経験をした方も多いのではないでしょうか?速報を受信してから強い揺れが来るまでには数秒から数十秒の短い時間しかありませんが、この間にどのような初期対応を取るかによって危険のリスクが大きく変わります。自宅マンション内で地震に遭遇したら、以下のような対応を心がけましょう。
《初期対応》危険物から離れ身を守ること
器やコップがすべり出しそうな食器棚、ガラスが飛散しそうな窓辺、転倒しそうな背の高い家具から離れ、柱や手すりなど固定されたものにつかまって揺れが収まるのを待ちましょう。料理中の場合は「まず火を止めなくては」と考えがちですが、近年は震度5以上の揺れを感知するとガスの供給は自動的にストップする仕組みになっているため、まずは身の安全の確保を優先しましょう。
トイレやお風呂に入っていた場合、落下物の危険は少なくなりますが、大きな揺れによってドアが変形し閉じ込められる可能性があります。真っ先にドアを開けてから揺れが収まるのを待ちましょう。また、万一マンションのエレベーター内で地震に遭遇した場合は、すべての階のボタンを押し、停止した階で速やかに降りること。停電によって閉じ込められた場合は非常ボタンを押し続け、管理会社に通報を行います。
《避難経路確保》玄関ドアや窓を開けっぱなしにすること
揺れが収まったら避難経路を確保します。このとき、飛散したガラス等でケガをする可能性が高いため、厚底のスリッパや靴などに履き替え、雑誌や新聞紙で足場を作りながら慎重に室内を移動しましょう。また、玄関ドアがちゃんと開閉するかを確認し、開いた場合はそのまま開けっ放しに。時間が経つとドア枠が変形して開閉できなくなるケースがあるため、共用廊下側の窓も開放しておくと良いでしょう。
《ライフライン確認》トイレの水は流さないこと
地震の揺れによる破損の影響で、漏電や家電製品火災を起こす危険があるため、「電気のブレーカー」を落とし「ガスの元栓」を締めましょう。また、見えないところで排水管が壊れ下階に水漏れしてしまうケースも。安全が確認できるまでトイレの水は流さないようにします。
《避難行動》エレベーターは使わないこと
室内の状況等を見て避難が必要と判断された場合は、非常用持ち出し袋を持って避難行動を行います。基本的なことではありますが「エレベーターが動いていても絶対に使わない」こと。非常用電源で当初動いていたとしても、急な停電で庫内へ閉じ込められてしまう危険があります。また、避難行動を行うときは近隣住戸へ声がけを行い、救出や応急手当が必要な人がいた場合は早急な支援に努めましょう。
《ジオ》では全住戸に「防災ガイドブック」を配布。管理会社・管理組合の協力による防災意識の向上も
《ジオ》シリーズでは、すべての住戸に「防災ガイドブック」を配布。地震への備えや災害時の初期対応ついて詳しく解説しているほか、管理会社では、管理組合が中心となって活動する防災訓練などの取組支援も行っています。「災害対策がしっかり行われているマンション」を選ぶことも防災への備えのひとつ。この機会に現在おすまいのマンションの“防災力”について確認してみてはいかがでしょうか?