突然の転勤などで所有マンションを賃貸に出すときの手順と注意すべきポイントは?
突然の辞令による他府県への転勤や、転職、親の介護のための地元Uターンなど、様々な事情で購入したマンションから引っ越さなくてはならないケースがあります。このような場合、選択肢としては「所有継続(賃貸運用)」または「売却」の2つの方法がありますが、今回のジオプラットでは「賃貸運用」を行う際の手順や注意点についてご紹介します。
まずは「不動産会社」を探すことからスタートしよう
所有マンションを賃貸に出す場合、まず最初に行うことは「仲介してくれる不動産会社を探すこと」。
不動産会社を選ぶ際には、賃貸を取り扱っている不動産会社を選びましょう。賃貸は空き家になると家賃が入ってこないため、借り手の集客力が見込める不動産会社を選ぶことが重要になります。
また、特定の地域に強い賃貸仲介会社へ相談してみるのもひとつの方法です。特定の地域に特化した賃貸仲介会社の場合、その地域の賃貸管理物件を数多く扱うことで、入居希望者からの問い合わせ件数が増えるため、貸主と借主をスピーディにマッチングしやすくなる傾向があります。住宅情報サイト等でその地域の賃貸物件を検索してみると、地域に強い賃貸仲介会社が見えてくるはずです。
なお「親戚に貸す」「友人に借りてもらう」といった場合には、不動産会社を挟まずに賃貸に出すことも可能ですが、事前に契約書を交わしておかないと、家賃滞納や設備故障、退去時の修繕費などをめぐって後々トラブルになるケースも少なくありません。こうした面倒を避けるためにも、不動産会社を通じて賃貸借契約を進めたほうが安心です。
大手デベロッパーの分譲マンションの場合は、仲介も含めて入居後のサポートに対応するコンシェルジュ窓口が設けられているケースもあるため、まずは窓口へ問い合わせてみるのも良いでしょう。
次に3つの方法から「契約の内容」を決めよう
不動産会社が決まったら、次に「どのような契約内容にするか?」について検討します。不動産会社との契約には大きく分けて以下の3つの方法があります。
①一般賃貸借契約
貸主(賃貸人)と借主(賃借人)との間で賃貸借契約を結ぶための手続きのみを行う契約。不動産会社は契約手続きのみを行うため、発生するのは法定仲介手数料(賃料の一か月分が上限)のみ。その後は貸主の自主管理となるため、毎月の家賃はすべて貸主の収入になります。ただし、借主がみつからない場合は空室のまま未収入となるほか、家賃の滞納や設備故障(エアコンの修理など)についても貸主自らが対応しなくてはなりません。
②一般賃貸借契約+管理委託契約
不動産会社が貸主に代わって、家賃の回収・設備修繕等の管理業務を行ってくれます。不動産会社を間に挟むことで、借主から直接クレームを受けることがなくなるため管理の手間を省くことができるほか、万一家賃の滞納が発生した場合は不動産会社が督促を行ってくれます。ただし、委託管理費として家賃の5%~10%程度の費用が毎月発生します。
③サブリース契約
貸主と不動産会社が「サブリース契約」を結び、不動産会社が入居者を見つけて住戸を貸し出す「転貸借契約」です。不動産会社が住戸を借り上げてくれるため、万一空室が続いたとしても安定した家賃収入を確保できます。ただし、賃料は相場の60%~80%程度と安くなるほか、解約の際には費用が発生するなどのデメリットもあります。
この他にも、「転勤が〇年間の予定なので、〇年後にはまた戻りたい」という場合には、あらかじめ賃貸期間を定めた「定期借家契約」を結ぶこともできます。ただし、賃貸期間が決まっていると入居者を獲得しにくくなるため、相場よりも賃料が安くなる傾向があります。
周辺相場と比較しながら「適正賃料」を設定しよう
賃貸契約の内容が決まったら、次に「賃料」を設定します。貸主側としては「少しでも高く貸したい」という気持ちが強くなりますが、周辺相場よりも割高な設定にしてしまうとなかなか入居者が決まらず、空室が続いて結果的に損をしてしまうケースも少なくありません。「最寄り駅」や「駅徒歩分数」「間取り」を目安に周辺相場を把握した上で、適正な賃料設定を行いましょう。
住宅ローンが残っている場合は、住宅ローン+管理修繕費+固定資産税等の支払いが今後も継続して発生することになるため、それらの経費を上回る金額で賃料を設定できれば理想的です。
希望賃料が決まったら、不動産会社の担当者に相談してみましょう。賃料が適正かどうかの査定を行った上で、地域によって慣習が異なる「敷金・礼金」の設定など、より具体的な賃貸借契約についてのアドバイスがもらえるはずです。なお「分譲賃貸」の場合は、通常の賃貸物件よりも建物構造やセキュリティ、室内設備のグレードが高くなるため、周辺相場よりも賃料が高めに査定されるケースが多いようです。
入居者の募集についてはすべて不動産会社が行います。早い場合で1ヶ月以内、通常なら2か月程度、3か月を過ぎても入居者が決まらない場合は賃料設定の見直しが必要になります。こうした手順を経て、入居希望者が見つかったら「賃貸借契約の締結」となります。
まだ住宅ローンが残っている場合の注意点とは?
住宅ローンの借入がまだ残っている場合は、以下の点に注意が必要です。
■金融機関へ報告を行う
住宅ローンの利用は「本人または家族がその住宅に居住すること」が原則となっています。そのため、転勤などやむを得ない理由で引っ越しを行う時は、金融機関への報告が必要になります。この報告を怠った場合は、「不動産投資を目的とした住宅ローンの不正利用」とみなされ、悪質と判断されたときは残債の一括返金を求められるケースもあります。賃貸借契約が締結した時点で借り入れ金融機関へ報告を行いましょう。
■マイホームを賃貸に出すと住宅ローン減税は受けられなくなる
年末の住宅ローン残高に応じて収めた所得税の一部が還付される「住宅ローン減税」も、「居住の用に供した場合」が原則となっています。そのため、マイホームを賃貸に出した後は住宅ローン減税の適用対象外となります。ただし、数年後再び転勤等でマイホームに戻ってきたときに、まだ適用期間が残っていれば減税措置が復活します。
管理組合への届け出、確定申告も忘れずに
■管理組合への届け出
賃貸借契約が締結したら、管理組合へ賃貸運用の旨を伝え、所有者本人の住居変更届を提出します。この届出によって、引っ越し後も総会の委任状や決議内容などの重要書類が新居に届けられることになります。実際に住んでいなくても「区分所有者」である以上、管理組合の一員であることに変わりはありません。管理・修繕積立金の状況や総会の内容などは引き続き把握するよう努めましょう。
■確定申告
賃料収入は「不動産所得」となるため、賃料収入を得た翌年から「確定申告」が必要になります。このとき、賃料収入の総額から必要経費を差し引いた分が不動産所得となります。
【必要経費として認められるもの】
●固定資産税・都市計画税
●火災保険等の損害保険料
●管理費・修繕積立金
●住宅ローンの利息分
●借主(賃借人)への郵送物など通信費
●エアコン、給湯器など設備更新費用
●退去時のクリーニング・リフォーム費用
●管理委託料など
「大家さんになること」を自覚しよう
所有しているマンションを賃貸に出すということは「自分が大家さんになる」ということ。その点を自覚して、他の区分所有者や管理組合への配慮を行うことも大切です。特に、分譲マンションの場合は、区分所有者と賃貸入居者の間で「生活マナーに対する意識の違い」が問題になることが多く、ゴミ出しルールやペット飼育に関する「賃貸入居者のマナー違反」が管理組合の議題に挙がるケースも少なくありません。万一賃貸入居者がトラブルを起こした場合は、大家さん(貸主)の責任が問われることになるため、賃貸借契約の条項の中に「管理組合が定めるマンション管理規約の厳守」を盛り込むようにしましょう。