夏のマンションが暑くなるのはなぜ?!
その原因と、猛暑を乗り切る暑さ対策を解説!
国内観測史上で最も平均気温が高くなり、例年より+2.16度(速報値)を記録した2024年7月。連日40度に近い猛暑日が続き、暑さ疲れを感じている方も多いのではないでしょうか?特に、外から帰宅してマンションの玄関ドアを開けたときの、あの「室内にこもったモワっとした熱気」は何度経験しても不快なものですが、実はマンションは建物の構造上「熱がこもりやすい傾向」があるため、一戸建てよりも暑さを感じやすくなると言われています。そこで今回のジオプラットでは、夏のマンションが暑くなる原因と、今年の猛暑を乗り切るための暑さ対策について解説します。
高い気密・断熱性が逆効果?!夏のマンションが暑くなる原因とは・・・
一戸建てとマンションで大きく異なるのは建物の素材の違い。木造が多い一戸建てに対し、マンションはRC(鉄筋コンクリート造)またはSRC(鉄骨鉄筋コンクリート造)でできているため、熱の伝導率が高くなります。
実際に熱伝導率※を比較してみると、天然木材が0.12λ(ラムダ)であるのに対し、コンクリートは1.6λとなっており、なんと10倍以上の違いが。そのぶん「冬は太陽光の熱が伝わりやすくなるため、マンションのほうが暖かい」というメリットもあるのですが、強烈な猛暑日の中では「マンションの暑さ対策」が不可欠になります。
また、素材以外にも、マンション特有の構造や事情により、熱がこもりやすくなる原因があります。
【気密性が高い】
マンションは気密性が優れているため、基本的に隙間風は発生しません。特に窓を閉め切った状態では、部屋全体がラップで覆われたような状態になり、窓やコンクリートの外壁から熱が吸収されて室温が上がると、空気を入れ替えない限りなかなか外へ放出されません。
【断熱性が高い】
断熱性の高さもマンションの特長のひとつ。安定した室温を維持しやすく、本来は夏涼しく冬暖かく過ごせる住まいとなるはずなのですが、真夏はその優れた断熱性能が逆効果になってしまうことも。一度熱がこもると、熱を帯びた空気が室内で対流し「保温」状態になってしまうため、「熱をこもらせないこと」が暑さ対策のカギとなります。
【窓が少ない】
マンションは一戸建てと比較すると1部屋当たりの開口面が限られ、窓の数が少なくなりがちです。窓の数が少ないと室内の空気が循環しにくくなり、熱がこもりやすくなります。特に壁面が多くなる内廊下設計のマンションや中住戸は、意図的に風の通り道をつくることが大切です。
【都市型立地にある】
都心や駅近など、便利な場所に建っていることが多いマンション。しかし、緑地が少なく、コンクリートやアスファルトに覆われている都市部では、ヒートアイランド現象によって郊外よりも気温が高くなり、夜になっても街のなかに熱がこもった状態が続きます。こうした立地特性も「マンションは暑い」と言われる理由のひとつと考えられています。
同じマンションの中でも「暑くなりやすい部屋」がある!
実は同じマンションの中でも「暑くなりやすい部屋」があります。冷房代の負担が大きくなる可能性もあるため、住まい選びの際は以下の点に注意して住戸を選びましょう。
【最上階住戸】
マンションの屋上は、傾斜のない「陸屋根」と呼ばれるフラットな構造になっており、コンクリートスラブに直射日光が当たって熱がこもりやすくなります。つまり、そのすぐ下に位置する最上階住戸は、マンションの中で最も熱の影響を受けやすく「暑くなりやすい部屋」になります。最近の新築マンションは、屋上面の断熱性能も向上していますが、中古マンションの場合は特に注意が必要です。
【角住戸】
一般的に人気が高い角住戸ですが、中住戸よりも窓面が多くなることで直射日光が入りやすく、暑くなりやすい傾向があります。特に、近年トレンドとなっている「ダイレクトウィンドウ」は要注意。庇がなく足元から天井まで開口部が広がっているため、ダイナミックな眺望と明るさを満喫できる反面、陽射しを遮ることができず室内に熱がこもりやすくなります。また、角住戸の中でも強い西日が当たる高層階の西向き住戸は強烈な暑さに悩まされることがあります。
【1階住戸】
温かい空気は下から上へ昇っていくため、夏でも涼しそうなイメージがある1階住戸。しかし、反対に湿った空気が上から下へと降りてくるため湿気が溜まりやすくなり、他の階とは異なる「蒸し暑さ」を感じることも多いようです。また、日当たりの良い1階住戸の場合、専用庭の地面への蓄熱や、アスファルトからの照り返しを受けて暑くなるケースがあります。
マンションの室内を暑くしないための「3つの鉄則」とは?
ここからはマンションの暑さ対策について。猛暑の中でも快適な室内をつくるためには「エアコンを使う」だけでなく、まずは「直射日光を室内へ入れないこと」そして「熱をこもらせないこと」が大事です。次の3つの鉄則を意識して適切な暑さ対策を心がけましょう。
①遮光する
これはマンションに限らず、住まいの暑さ対策の基本中の基本。最近はミニマリズムブームの影響で「カーテンをつけない家」も増えているようですが、最も気軽に遮光できるのがカーテンまたはブラインドです。完全遮光のアイテムは通常より金額がやや高めですが、暑さ対策を考えるなら完全遮光素材がオススメ。UVカット効果もあり、家具の日焼けも防ぎます。なお、インテリアデザインにこだわりがあり、どうしても遮光カーテンやブラインドを設置したくない場合は、ガラス面に直接遮光フィルムを張り付ける方法もあります。
また、日本古来の暮らしの知恵である「すだれ」を窓の外側に設置すると、直射日光を遮りつつ通風も確保できます。マンションでは設置しにくい場合もありますが、気軽に取り外しできる突っ張り式タイプも登場しているため、管理規約上問題ないかを確認した上で取り付けを検討してみましょう。
②余計な熱を溜めない
室温が上がってしまう原因のひとつに「家電製品から放出される熱」があります。特に温度が高くなるのは、スマホ・タブレットなどの充電器やパソコンの本体、照明器具に使われている白熱灯、電気ポット、炊飯ジャーなどで、中には50~60度を超える製品もあるようです。充電器やパソコンは使用を終えたら必ずいったんオフにすること。ポットなどのキッチン家電は長時間保温しないこと。また、室内の照明器具は、発熱量の少ないLEDに換えるようにすると家電の熱が溜まりにくくなります。
③換気して空気の通り道をつくる
コロナ禍の経験を受けて「換気」が習慣化しているご家庭も多いと思いますが、真夏も換気を忘れずに。外から帰宅して玄関を開けた時に「モワっとしたイヤな熱気」を感じた場合は、一度窓を開けて熱気を外へ逃がしてからエアコンをつけるようにすると、冷房の効きが良くなります。窓を開けて換気を行う際は、対角線上にある2つの窓を開けて空気の通り道を確保。対角線上に窓がない場合は、換気扇やサーキュレーターを活用すると同様の効果が期待できます。また、サーキュレーターをエアコンの対角線上の床面に置き、エアコンの吹き出し口に向けて風を当てるようにすると、冷えた空気が対流して室内全体が涼しくなります。
住まい選びのときは「マンションの性能」についてもチェックを!
近年、技術の進歩と省エネ志向の高まりにより、新築マンションの性能も進化し、環境に配慮したエネルギー効率の高い設備や断熱性能を高めた壁や天井、窓などの普及で、居住空間の快適性が一層向上しています。こうした技術を取り入れたマンションは、冬の暖かさだけではなく、夏の暑さ対策にも優れています。気になる物件が見つかったら、「性能チェック」を必ず行いましょう。