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マンションの防災対策④
もしものために備えておきたい防災グッズと保管場所

2024年8月8日、九州南部・日向灘を震源とするマグニチュード7.1の地震発生を受けて、2019年の運用開始以降初めて「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」が発表されました。注意の呼びかけは1週間で解除されたものの、その後も地震が発生しているため「この機会に改めて自宅の防災対策を見直している」という方も多いのではないでしょうか?そこで今回のジオプラットでは「マンションで備えておくべき防災グッズ」について解説します。

万一の災害時、耐震性の高いマンションでは「在宅避難」が推奨される

1981年に施行された「新耐震基準」では、震度6強から7の大規模地震が発生しても建物が倒壊・崩壊しないよう、新たな耐震性能の基準が設けられました。さらに2000年には、より厳しい内容に改正され、接合部で使用する金物の種類や、耐力壁のバランス計算についても新基準が定められました。そのため、2000年の改正以降に建築確認申請が行われたマンションなら、最新基準の耐震性能が確保されていると考えても良いでしょう。

こうした建物性能の高まりを受けて、各自治体では「万一の災害時、自宅へ留まることができる状態なら避難所への移動を控え、在宅避難を行うこと」を推奨しています。特にマンションの場合は木造住宅等と比較すると頑丈な建物構造となっており、在宅で避難生活を送る可能性が高くなるため、その期間を想定して防災グッズを用意しましょう。

マンション内の在宅避難に備え、用意しておくべきアイテムとは?

首都直下地震等が発生した場合の東京の被害想定(内閣府)によると、ライフライン復旧にかかる日数は、電気で6日、上水道で30日、ガス(都市ガス)で55日(※)となっており、在宅避難を行うためには「少なくとも1週間分」を目安に、飲料水・食糧・その他必要な物資を備蓄するのが望ましいとされています。

マンション内では、常にローリングストックを意識しながら日用品を兼ねて常備する「備蓄ユニット」と、在宅避難の継続が困難になった場合に向けて用意しておきたい「非常用持ち出し袋」を、次の4つの内容に分類して保管しましょう。

※:内閣府(防災担当)作成資料:首都直下地震対策/被害想定結果について(P41)
https://www.bousai.go.jp/kaigirep/chuobou/senmon/shutochokkajishinsenmon/15/pdf/shiryou2.pdf

備蓄ユニット・・・①最小限備えておきたい主な食料品

●水・・・ひとりあたり1日3リットルが目安となる
●食べ物・・・レトルトご飯・缶詰・カップ麺・菓子・栄養補助食品・加熱しなくても食べられる加工品など
●野菜ジュース・・・ミネラル・ビタミン不足の補給に有効、長期保存できる缶ジュースのストックが望ましい

備蓄ユニット・・・②最小限備えておきたい主な生活用品

●大型ポリ袋・ゴミ袋・・・防寒やレインコート、簡易トイレなど様々な使い道があるため避難時の必需品
●紙皿・紙コップ・割りばし・・・水を無駄遣しないためにこれらの使い捨てアイテムが必要
●ラップ・・・お皿に被せて使えば水の使用量を節約、三つ編みにして束ねるとロープ代わりにもなる
●使い捨てカイロ・・・首や尾てい骨の後ろに貼ると全身が温まりやすくなる
●カセットコンロ(ボンベ・ライター・乾電池)・・・暖をとったり、哺乳瓶の消毒にも使える。ガスボンベは1週間で6本程度が必要
●トイレットペーパー・ティッシュ・ウェットティッシュ・・・衛生管理のための必需品
●LEDランタン・・・夜間停電時、足元の安全を確認しながら室内を移動するときに必要

非常用持ち出し袋・・・①家族の人数分用意しておくと助かる防災アイテム

●携帯電話の予備バッテリー・・・ソーラー充電タイプなど予備バッテリーを複数用意しておく
●歯ブラシ・・・水や歯磨き粉を使わない防災用歯ブラシなど
●携帯トイレ・・・最低3日分用意するのが望ましい
●トイレットペーパー・・・内側の芯を引き抜いて折り畳んだ状態で持ち歩くと便利
●厚手のバスタオル・・・防災頭巾や毛布代わりにも使うことができる
●マスク・・・避難所では感染症が広がる可能性があるため必需品
●その他・・・赤ちゃんの離乳食やミルク、おむつなど

非常用持ち出し袋・・・②ビニールポケット等にまとめておきたい大切なもの

●身分証明書・・・銀行から預金を引き出したい場合、災害時の特別措置として通帳や印鑑を紛失しても本人確認書類があれば引き出しできる
●家族の写真・・・万一所在不明となった家族を探す時に役立つ
●その他・・・証券・権利書・年金手帳・通帳・実印などをファイルケースにまとめておくのが望ましい

備蓄ユニットと非常用持ち出し袋は「分散収納」を!

防災グッズの保管場所といえば、すぐに取り出して避難行動に移ることができる「玄関周辺」をイメージされる方が多いと思いますが、近年は室内数か所に分けて保管を行う「分散収納」が推奨されています。

なぜなら、大地震が発生した場合、建物自体は倒壊などの被害を免れたとしても、地震の揺れによってドアが変形したり、収納家具が転倒・損壊して「玄関までたどりつけない」「家具の下敷きになった防災グッズを取り出せない」といったケースが想定されるからです。一か所にまとめて保管するのではなく、用途別に分類して部屋ごとに「分散収納」を行えばリスクの分散につながります。

●玄関周辺・・・非常用持ち出し袋①の保管場所

マンションでは窓から外への避難が難しく、基本的に「玄関」が唯一の避難経路となります。そのため「非常用持ち出し袋①」のような避難グッズは、玄関になるべく近い場所に保管します。外出先で被災した場合、一時的に帰宅して非常用持ち出し袋を取り出したい場合も、玄関の近くにあればスムーズです。

●キッチン周辺・・・備蓄ユニット①②の保管場所

水や非常食はローリングストックを心がけて常にキッチン周辺に備蓄を。折り畳み式のコンテナ等を使い「備蓄ユニット①②」を小分けにして保管します。こうした防災上の観点からも、住まい選びの際は「キッチンのまわりに大型収納が設置されているプラン」を選ぶと良いでしょう。

●リビング周辺・・・在宅避難の拠点

在宅避難を行う場合、家族がリビングに集まって生活する時間が長くなります。そのため、リビングを「家族の避難所」と想定し、手が届きやすい場所に必要な防災グッズを保管しましょう。例えば、ラジオやランタンなどは日頃からインテリアの一部としてリビングに置いておくと、保管場所を取りません。また、近年は防災グッズを収納できるおしゃれなオットマンやスツール等も登場しているため、インテリアアイテムとして活用してみましょう。

●寝室・・・非常用持ち出し袋②の保管場所

被災後の生活復旧に欠かせない「非常用持ち出し袋②」のような大切なアイテムは寝室に保管します。子どもたちも「自分の大切なもの」を自室で保管・管理させることで防災意識の向上につながります。また、夜間就寝時の停電や、家具転倒によるガラスの飛散に備え、ベッド周辺には懐中電灯やスリッパ、靴下、手袋(軍手)などを置いておくと良いでしょう。

●トイレ・・・ビニール袋や凝固剤の保管場所

マンションでは大地震のあと、排水経路の安全確認が取れるまで「トイレの水を流してはいけない」とされています。トイレ内にはトイレットペーパーのストックだけでなく、便器に被せて使うための「厚手のビニール袋」や、排泄物をゼリー状に固める「消臭・凝固剤」を保管しておくと、衛生管理を行いやすくなります。

防災グッズは「高いところに置かない」が鉄則!家族で担当を決めて防災意識を高めよう

なお、防災グッズの保管場所は「手の届く場所に保管する=高いところに置かない」が鉄則です。分散収納を行ったら家族で担当パートを決めて、季節ごとに防災グッズの使用期限、賞味期限、残量の確認を行う習慣をつけるようにすると、家庭内の防災意識の高まりにつながります。

災害は忘れた頃にやってくる・・・と言われますが、日頃からの備えを怠らず常に意識を持つことは何より有効な「自助活動」。改めてこの機会に防災グッズの内容と保管場所の見直しを行ってみましょう。

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