購入前に知っておきたい、「資産価値が落ちにくいマンション」の選び方とは?
マンションには「私的価値」と「資産価値」の2つの価値があります。私的価値というのは個人の住まい志向による価値のこと。例えば「この街の雰囲気が好き」「実家から近い」「予算の範囲内で購入できる」などの私的な要因が当てはまります。一方、資産価値というのはマーケットの視点から分析する不動産評価のこと。将来所有物件を売却したり、賃貸として運用を行う際には「資産価値」に基づいて価格や賃料を算出することになるため、マンション購入時には「私的価値」だけでなく「資産価値」を客観的に分析することも大切です。そこで今回のジオプラットでは「資産価値が落ちにくいマンションの選び方」について解説します。
マンションの資産価値は「立地・スペック・管理」で決まる!中でも最重要は「立地」条件
マンションの資産価値は「立地・スペック・管理」の三大条件で決まるといっても過言ではありません。中でも重視されるのは「立地」。立地条件は“自分で変えたいと思っても絶対に変えることができない条件”だからこそ、そこに不動の価値が生まれます。次の3つのポイントをチェックして「立地の価値」を客観的に分析しましょう。
【立地のポイント①駅からの近さ】
一般的にマンションは「駅から近いほど価値が下がりにくい」と言われます。これは多くの人たちが、住まいを選ぶときに「駅近の利便性」を重視しているから。国交省の「令和5年度マンション総合調査」を見ても、「マンション購入時に考慮した項目」で最も多かったのは「駅からの距離などの交通利便性(約71.6%)」という回答になっています。
参考:国交省マンション総合調査 P3
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001750093.pdf
つまり、駅に近いマンションなら、この先築年数を経ても「住みたい」と関心を持つ人が多く、安定した住まいニーズに支えられるため、資産価値が落ちにくいと考えられます。加えて、複数路線が使えるターミナル駅や、都心に直結する快速・急行停車駅の駅近立地なら、より高い資産価値を期待できます。
【立地のポイント②生活利便性】
「最寄り駅の駅ナカ施設が充実している」「徒歩圏内に大型商業施設がある」「近くに救急対応してくれる病院がある」「ドッグランがある大型公園に近い」などの暮らしやすさも大切な立地条件。マンションを選ぶ人は「生活効率の良さ」を重視する傾向にあるため、生活利便が整ったマンションなら立地評価も高くなります。
【立地のポイント③街の将来性】
いま全国の市区町村では、将来の人口減少を見据えて、商業・福祉・医療等の生活機能を集積させる「都心機能誘導区域」や、一定の人口密度を維持する「居住促進区域」を明確に定めています。つまり、その区域から大きく外れたエリアでは、人口減少と共に街が衰退し、地域評価の低下と共にマンションの資産価値が下がっていく恐れがあります。一方、大企業の事業所誘致が進められていたり、市街地再開発促進区域に指定されているようなエリアでは、街の開発によってオフィスや商業施設が増え、そこに多くの人たちが集まることで地域評価や資産価値がどんどん上がっていく可能性があります。こうした情報については、各自治体のホームページで確認することができるため「街の将来性」と共に「資産価値ののびしろ」についても分析しましょう。
「スペック」とは物件の特長のこと。多くの人から好まれるスペックがあれば資産価値を維持しやすい
マンションの「スペック」とは、広さ・間取り・設備・仕様・方位・階数・規模といったその物件の特長のことを指します。ただし、人それぞれに好みが分かれる部分でもあるため、マーケットにおけるニーズと物件スペックのバランスを見極めることが大切です。
【スペックのポイント①広さと間取り】
「広さ」に関しては“広ければ広いほど良い”というわけではありません。シングルやDINKsから好まれる都心エリアでは、1LDKや2LDKのニーズが高くなる傾向があり、将来の売却や賃貸を想定すると、広すぎないコンパクトプランのほうがスムーズに運用できる可能性があります。
一方、自然豊かなエリアや教育機関が充実した文教エリアでは、子育てファミリーからの住宅需要が集まりやすく、3LDKや4LDKなどの大型プランのほうが流動性が高くなります。「そのエリアの地域特性」にマッチする広さ・間取りを分析した上で検討しましょう。
【スペックのポイント②規模】
一般的には「総戸数の多い大規模マンションのほうが資産価値を維持しやすい」と言われます。なぜなら、大規模マンションは管理・修繕費を多くの世帯で按分できるため、コンシェルジュ、ラウンジ、パーティルーム、ライブラリーなど華やかな共用施設を設置することで、マンションのスペックを際立たせることができるからです。
いずれにしても、マンションは「あの物件に住んでみたい!」と思う人が多ければ多いほど、中古物件になった後も評価が下がりにくく、資産価値をより長く維持しやすくなります。「自分の好み」だけでなく「多くの人から好まれるスペック」を客観的に分析しましょう。
マンションの価値は「管理」次第!と言われている理由とは?
「マンションの価値は管理で決まる」というのは不動産業界でよく言われる言葉です。管理がしっかりと行き届いていないと、建物の美観が損なわれたり、適切な修繕が行われなかったりして、マンションの品質自体が低下していく恐れがあるからです。管理については次の2つのポイントをチェックしましょう。
【管理のポイント①長期修繕計画】
マンションを適切に管理する上で欠かせない経費が「管理費」と「修繕積立金」。一般的な新築マンションでは、当初の支払額を極力抑え、段階的に引き上げる計画になっていますが、築年数を経ると圧倒的に管理修繕費が不足するケースが多く、サービスの一部が廃止されたり、本来実施すべき修繕工事が後回しにされるなどの事例が見られます。このように不足した管理修繕費を補うためには「月額の値上げ」や「一時金の徴収」を行うしか改善策がありません。
そこで、国交省は2024年6月に「修繕積立金の値上げ幅は最大1.8倍まで」とするガイドラインを作成。管理修繕費の負担を将来に後回しにしないよう健全な計画設計を促しています。マンションを購入する際には管理体制や長期修繕計画をしっかり確認し、新しいガイドラインに基づいて計画が行われているかどうか?をチェックしましょう。
【管理のポイント②管理体制】
新築マンションの場合は一斉入居前の段階で実際の管理状況を把握することは難しいですが、中古マンションなら「建物の美観が維持されているか?」「エントランスまわりの清掃が行き届いているか?」などをチェックすることでその物件の管理体制を判断できます。中でも、管理の良し悪しが一目瞭然となるのが「ゴミ置き場」と「植栽」の様子です。管理スタッフの目がしっかりと行き届いたマンションなら、ゴミ置き場の中も整然としていて常に清潔感が保たれています。また、生垣などの植栽は人の手をかけることで美しい状態を保つことができるため、緑が生き生きとしていれば良好な管理が実施されていると分析できます。なお、管理に関しては、配置されているスタッフの人数や「常駐・日勤・週勤」といった勤務サイクルによっても品質が大きく変わります。管理スタッフの勤務形態についても事前に確認しておきましょう。
住まい選びで最も大切な条件は「私的価値=住み心地の良さ」であることを忘れずに!
近年は、ライフステージの変化に合わせて「住み替え・買い替え」を検討する人が多く、マンションは“一生に一度の大きな買い物”ではなくなりつつあるようです。そのため、将来の売却や賃貸運用を想定して資産性の高いマンションを選ぶ人が増えていますが、実は資産価値だけでは“本当の住まいの価値”をはかることはできません。住まい選びで最も大切な条件は、自分や家族が心地よく健やかに暮らせること──今回ご紹介したポイントを参考にしながら「私的価値=住み心地の良さ」を叶えるマンションを選ぶことをおすすめします。
記事監修/住宅ジャーナリスト 福岡由美