多摩川をはさんで東京都世田谷区に隣接する川崎市高津区は、自然と歴史に見守られ、周辺地域へのアクセスにめぐまれた街である。
都内から国道246号を走ってくると、二子玉川の先の二子橋で多摩川を渡り、ほどなく梶ケ谷の交差点に差しかかる。さらに直進すればスタイリッシュな街「たまプラーザ」へ、右に折れれば緑あふれる生田方面へ、つながることができる。
国道と平行するように走る東急田園都市線も、日常生活には欠かせない。自然の地形をそのまま活かした街並みを走るこの電車は、ときに街を見下ろし、ときに街を見上げる。渋谷方面や自由が丘方面に直結する利便性は、人々の暮らしを支える。
緑あふれる街で暮らす 高津区梶ケ谷
国道246号梶ケ谷の交差点あたりから左へ一歩入ると、梶ケ谷の街が広がる。梶が谷駅周辺には、エルカジ通りと呼ばれる商店会があり、デイリーユースの店舗や、コーヒーショップなどが並ぶ。
駅からほんの数分歩けば、ゆるやかな坂道が形成する静かな住宅街が現れる。昔は高津区から宮前区周辺は花栽培が盛んだったというだけあって、生け垣やガーデニングを手がける家が多く見られる。
子どもたちが歓声を上げているのは、自然の地形を活かした梶ケ谷第一公園(高津区梶ケ谷2-10)。遊具のある広場とその奥の斜面、園内をせせらぐ小川に近くの子どもが集まる。1.3万m2のこの公園は、昭和45年開設以来、たくさんの人々に親しまれてきた。斜面に植えられた約280本の桜は、季節になると見事に咲き誇り、毎年大勢の地元の人々で賑わう。
梶が谷駅から電車に乗って、隣の溝の口駅に降り立つと、そこは近代的なショッピングエリアになっている。駅からデッキで結ばれる2つのビルには、地元商店のほか、丸井も出店し、幅広い世代に人気を得ている。
鉄道の歴史なくして語れない 東急田園都市線
この街の発展に、東急田園都市線開通は欠かせないであろう。昭和41年に溝の口~長津田間が開通したのを機に、周辺一帯は大きく発展し、今もなお進化し続けている。
東京急行電鉄の事実上の創業者である五島慶太(ごとうけいた)氏は、田園都市線を開通するまでの間に、阪急電鉄の小林一三(こばやしいちぞう)氏の助言を得ていたとも言われている。鉄道事業で優れた経営力を発揮し、「西の小林・東の五島」と賞されるまでになったという。
もともと江戸時代から物資輸送の輸送路として栄えてきたこの街も、田園都市線によって、ますます利便性が増したと言えよう。横浜市の港北ニュータウンと都心をつなぐ路線として、通勤・通学のみならず、買い物客にも重宝される路線として確立されたのだ。
自由気ままに休日ライフ 心とからだを豊かにする
住所 | 神奈川県川崎市高津区新作1-19-1 |
電話番号 | 044-888-3131 |
HP | http://www.kawasaki-shiminplaza.jp/ |
文化と健康の総合施設として、子どもからお年寄りまで広く市民に活用されているのが川崎市民プラザ。
ふるさと劇場や屋内広場では、頻繁に演劇公演やイベントが開催され、賑わいを見せる。
自然いっぱいの子どものひろばには大きな遊具があり、元気に子どもたちが挑戦する。乳幼児ならば、屋内のプレイルームが重宝する。
隣接する清掃工場の余熱を利用した温水プールは、ガラスの天井から差し込む陽光で明るい。25メートルプールと子どもプールがあり、一年中楽しむことができる。
緑濃い日本庭園や周辺の散策路は、季節の移り変わりが感じられ、市民の憩いの場となっている。
住所 | 神奈川県川崎市中原区等々力1-1 |
電話番号 | 044-722-2191 044-733-5740(有料施設) |
川崎市はスポーツの街としても名高い。市民が気軽に楽しめるスポーツ施設もさることながら、プロのスポーツを間近で観戦できる環境にある。中でも等々力緑地公園は、市民ミュージアムや緑地などファミリーで1日楽しめる公園であるとともに、体育施設も充実している。
サッカーJリーグの川崎フロンターレのホームタウンである等々力陸上競技場。男子バスケットボールの東芝ブレイブサンダース(JBL)や、女子バスケットボールの富士通レッドウェーブ(WJBL)などのホームゲームが開催されるとどろきアリーナ。ほかにも、野球、女子バレー、アメリカンフットボールなど、川崎市を拠点とするスポーツチームが、市民のすぐそばで活躍し、地域活動を通して市民と触れ合っている。
国道246号と並行するように、一本入ったところを走る大山街道は、江戸赤坂御門から神奈川県伊勢原市までをつなぐ道。江戸時代は物資の輸送路として利用され、溝口村・二子村は宿場町と定められていた。
現在は車の往来する溝口大通り商店街であるが、当時の面影を残す蔵造りの商店もいくつか残されている。商店の前には由来や歴史を記されており、途中大山街道の案内板や大山街道ふるさと館もあるので、のんびりと見て歩くのもいい。
二子新地駅の近くにある「二子橋の旧欄干」から始まり、溝の口駅を通過して梶が谷駅近くまで、季節のいい時季ならば歩くのも苦にならない距離であろう。
国木田独歩文学碑が目印の高津図書館も、この街道沿いにある。
溝の口駅から徒歩5分、この地に根ざす洗足学園の向かいに、至福のやすらぎがある。フィオーレの森と名付けられたこのエリアは、静けさの中に個性が輝いている。
緑に囲まれた敷地内には、レストランやティールーム、雑貨店、ギャラリーなど、バラエティに富んだ店舗が点在している。そのどれもが洗練された落ち着きと、ゆったりとした時間の流れを創り出す。
お茶を飲むときも、足湯でからだをほぐすときも、ショッピングをするときも、それぞれの一コマは極上のものでなければいけない。そんな風に感じる空間である。
時には日常の忙しさを忘れ、セレブなひとときを。