マンションを買う前に知っておきたい、
「重要事項説明」のチェックポイントと注意点とは?
不動産を購入するときは、宅地建物取引業法において必ず売買契約締結前に「重要事項説明」を行うことが義務付けられています。重要事項説明とは、その名の通り「物件に関する重要な事項」について買主が説明を受けるもの。その書面は多いものだと十数ページの冊子となるほか、専門用語が多用されていることから“目を通すのが面倒くさい”と感じるかもしれません。しかし、重要事項説明は不動産契約のリスクについて検証する大切な機会。そこで今回のジオプラットでは、契約前に知っておきたい《重要事項説明のチェックポイントと注意点》について解説します。
重要事項説明はいつ、だれが行うの?

マンションを購入する場合、新築でも中古でも「重要事項説明」は売買契約日より約1週間ほど前にマンションギャラリーや販売センターで行うのが一般的です。重要事項説明は、必ず宅地建物取引士が「宅地建物取引士証」を提示した上で説明を行うことが義務付けられており、買主がその説明に納得できた場合は、書面に署名捺印を行い、その後売買契約に移ります。
このとき、宅地建物取引士は重要事項説明の内容を口頭で読み上げるため、説明の所要時間は2時間に及ぶことも。その場ですべてを理解することは難しいため、事前に書面見本やコピーを共有してもらい、内容を熟読した上で、重要事項説明当日に不明点を確認すると良いでしょう。
なお、事前に書面見本やコピーを読んで内容を把握できた場合でも、宅地建物取引士からの重要事項説明を省くことはできません。また、重要事項説明の内容について、どうしても疑問や不安が残る場合は、売買契約をいったん保留にしてもOK。しっかりと納得した上で本契約に進むことが大切です。
重要事項説明書にはどんなことが書かれているの?

重要事項説明書の記載項目には、大きく分けると「物件に関する重要事項」と「取引に関する重要事項」の2つがあります。中でも、特に注意してチェックしたいのは以下の項目です。
【物件に関する重要事項の主なチェックポイント】
●所在地・敷地面積・建物面積・専有面積等がパンフレットや図面集の記載事項と相違していないか?
●所有権を阻害するような権利が設定されていないか?(中古の場合、抵当権の抹消時期についても要確認/土地の権利が借地権の場合は「借地説明書」の確認が必要)
●工場・ガソリンスタンドの跡地など土壌汚染の疑いがある場合やアスベストの使用について、調査の有無や調査結果が正確に説明されているか?
●物件所在地の都市計画や用途地域に関する制限、および、ハザード情報の記載内容について、リスクをしっかり把握できているか?
●管理形態・管理委託先・管理費と修繕積立金の額について、事前に説明を受けた内容と相違していないか?
【取引に関する重要事項の主なチェックポイント】
●売買代金、契約時の手付金、その他諸費用について、金額に相違がないか?
●契約解除の場合、どのような場合に違約金が発生するか?(ローン特約に基づく契約解除についても要確認)
●万一売主や建設会社が倒産した場合、損害額をどこへ請求することになるか?(供託所の確認)
●万一引き渡し後に施工ミスや欠陥などが発覚した場合の瑕疵担保責任の履行について、どのような措置が講じられているか?
●(中古の場合)物件内で発生した事故やトラブル、心理的瑕疵等の「承認事項」について納得できているか?
マンションの重要事項説明で注意したいチェックポイントは?
マンションは多くの世帯で土地や建物を所有する不動産。そのため物件を所有する上での「権利」や「責任」の範囲がどこまで及ぶのか?について、事前に理解しておく必要があります。
【確認ポイント①】内法と壁芯による面積の違いを認識しておく
マンションの面積は
●壁芯(かべしん・へきしん)面積=建築基準法に基づき壁の中心を基準にして算出した面積
●内法(うちのり)面積=不動産登記法に基づき壁の内側を基準とした面積
の2つの種類があります。
一般的に物件の間取り図や重要事項説明書に記載される専有面積は「壁芯面積」ですが、登記簿に記載される面積は「内法面積」となり、壁芯よりも約5~10%狭くなります。住宅ローン控除等の税制優遇措置を受ける場合は「内法面積」が基準となるため、重要事項説明を受ける際にこの数字の違いについても確認しておきましょう。
【確認ポイント②】専用使用権に関する規約について齟齬がないか確認する
バルコニー・窓ガラス及びサッシ・玄関ドア・トランクルーム・専用庭・専用駐車場等は、本来は共用部分であるものの「専用使用権=特定の区分所有者だけが使用できる権利」が認められたスペースとなり、使用範囲や用途制限、使用料の有無について規約で定められています。重要事項説明を受ける際には規約内容と認識に齟齬がないかを確認しましょう。
【確認ポイント③】長期修繕計画と管理・修繕費について確認する
マンションの重要事項説明書には「通常の管理費の額(管理費)」「計画修繕積立金等に関する事項(修繕積立金)」に関する項目が設けられています。管理費は管理組合の運営に必要な経費、修繕積立金は長期修繕計画(案)に基づいて算出された建物を維持するための経費です。マンションの良好な管理体制を整え、資産価値を守る上で欠かせない経費となるため、その金額についてしっかりと再確認しておきましょう。また、国土交通省の新ガイドラインに沿って無理のない長期修繕計画が策定されているか?についても確認をしておくと良いでしょう。
一方、中古マンションを購入する場合、売主側に管理費・修繕積立金の滞納があった場合、買主が「滞納分の支払い義務」を承継することになります。また、仲介業者は、滞納の有無や滞納額について重要事項説明書に明記する義務があります。滞納分に関しては「売主が全額精算する」または「売却価格から差し引く」等の方法があるため、清算方法についての確認が必要です。なお、多くの世帯で管理・修繕費の滞納が続いている中古マンションの場合、管理組合の積立金が不足し、銀行へ借入れを行っている場合もあります。「管理組合の運営は健全な状態か?管理・修繕費が潤沢に積み立てられているか?」に関しては「重要事項調査報告書」で確認しましょう。
マンションの修繕積立金に関する国土交通省の新ガイドラインとは?
マンションの修繕積立金の積立方式は、新築当初の積立額を抑え、段階的に増額していく「段階増額積立方式」が主流です。しかし、近年は修繕工事費の高騰を受けて積立金が不足するケースが多く、大幅な負担増や一時金の徴収などが課題となっています。そのため、国土交通省は令和6年に《マンションの修繕積立金に関するガイドライン》を改正。徴収額を段階的に引き上げる場合は最大1.8倍まで(初期額は基準額の0.6倍以上~最終額は1.1倍以内を推奨)が適切であると明記されました。将来に負担を先送りしないためにも、このガイドラインに沿った修繕計画が策定されているかどうかを確認しましょう。
IT重説など、近年変わりつつある重要事項説明
コロナ禍以降、重要事項説明の方法も変わりつつあります。遠隔地在住で担当宅地建物取引士との対面が難しい場合は、パソコンやスマートフォンで重要事項説明を受けることができる「IT重説」が導入されたほか、買主からの要望があればPDFなどの電子書面での交付も可能となりました(ただし、物件によってルールが異なります)。いずれにしても、重要事項説明は「本当にこのまま契約を進めて良いかどうか?」を見極める最終判断ポイント。少々難解に感じても、しっかりと内容を熟読して理解を深め、晴れ晴れしい気持ちで本契約に進みましょう。