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定期借地権付きマンションとは?
購入メリットと購入前に知っておきたい注意点

一般的な分譲マンション(所有権マンション)を購入すると、契約者は「土地の敷地権」と「建物の区分所有権」を持つことになります。しかし、近年は土地を借りて建物だけを所有する「定期借地権付きマンション」が増えていることをご存知でしょうか?公益財団法人日本住宅総合センターの調査※1によると、2022年度に販売された定期借地権付きマンションは、10年前から比較すると約31%増加。特に東京・大阪・兵庫など、大都市圏での供給事例が増えているようです。そこで今回のジオプラットでは、定期借地権付きマンションの「購入メリット」と「購入前に知っておきたい注意点」について解説します。
※1:公益社団法人 日本住宅総合センター 定期借地権事例調査(2022年)

「借地権=土地を借りる権利」は大きく分けて3つの種類がある

借地権とは、その名の通り「土地を借りる権利」のこと。大きく分類すると「旧法借地権」「定期借地権」「普通借地権」の3種類があります。

■旧法借地権とは?

現在の借地借家法(1992年)が施行される前から存続している古い借地権。借地人(借りる側)の権利が手厚く保護されており、所有者(地主側)に正当な事由がない限り、更新すれば借地人は半永久的に土地を借り続けることができます。

■定期借地権とは?

1992年の借地借家法改正により新しく設けられた借地権のひとつ。一定の借地契約期間が設けられており、期間満了後は更新されません。なお、定期借地権には、主に「一般定期借地権」「建物譲渡特約付借地権」「事業用定期借地権」がありますが、近年の借地権付き新築分譲マンションは、ほとんどが「一般定期借地権」です。

■普通借地権とは?

定期借地権と同時に新設された借地権で、契約の更新が可能です。存続期間は当初30年、1回目の更新は20年、2回目以降の更新は10年となり、地主側に正当な事由がない限り自動更新されます。

定期借地権(一般定期借地権)付きマンションとは?購入前に知っておきたい注意点

定期借地権付きマンションでは、地主から期限付きで土地を借り、その上に建てられた建物を区分所有者で所有します。マンションに多い「一般定期借地権」の場合、存続期間は50年以上に定められていますが、物件によっては60年、70年など期間が異なります。なお、借地期間満了後は「建物を解体し、更地にして地主へ土地を返還すること」が条件となっています。

■注意点① 借地期間を過ぎた後は住み続けることはできない

所有権マンションとの大きな違いは「マンションのゴール地点=エンディングストーリーが明確に定められている」ということ。借地期間満了後は更地にして土地を返還することになるため、そこに住み続けることはできません。そのため、残存期間が短い物件の場合は、ゴールのタイミングから逆算しながら住まい計画のシミュレーションを綿密に立てることが大切です。

■注意点② 借地期間には建物解体期間が含まれる

借地期間には「建物を解体して更地にする期間」も含まれています。マンションの規模や工事時期にもよりますが、早くて数カ月から1年程度かかるため、住まい計画のシミュレーションを行う際は解体期間についても考慮しましょう。

■注意点③ 購入時の初期費用や月々の地代が発生する

土地部分に関しては、地主から期限付きで「借りる」ことになるため、土地の購入費用はかかりません。代わりに、契約時には「土地の権利金・保証金」「前払い地代」等の一時金が必要になります。また、引渡し後は、建物部分の住宅ローンの他に、毎月の「地代」を地主へ支払うことになります。なお、地代については管理組合が徴収し、とりまとめて支払うケースが一般的です。

■注意点④ 残存期間が短い場合、ローンの借入れが難しくなることがある

当然ではありますが、定期借地権の残存期間を超える住宅ローンは組むことができません。また、残存期間が短くなった物件では、金融機関の審査により融資額が少なくなるケースがあります。

■注意点⑤ 期間満了を迎えた定借物件はまだ無い

定期借地権付きマンションが登場したのは1992年のこと。残存期間が50年に定められた物件でも、借地期間満了を迎えるのは最短で2042年となるため、実はまだ「更地返還」を迎えた定期借地権物件の前例はありません。マンション史の中でも比較的新しい制度であるため、ゴールを迎えるまでの動向については他物件の事例を参考にしながら注視していきたいところです。

初期費用や税金負担を軽減できる?!定期借地権ならではのメリットにも注目!

上記の注意点だけを見ると、少々不安に感じるかもしれませんが、実は定期借地権付きマンションには様々なメリットがあります。

■メリット① 便利な立地にあることが多い

定期借地権付きマンションの多くは、地主が「絶対に手放したくない」と思うほど便利な場所や、資産としての評価が高い場所に登場します。新築分譲マンションが滅多に出てこない希少な立地であることも多いため、“その土地の価値”を納得できる方にとっては大きなメリットとなります。

■メリット② 住宅ローンの借入れを少なくできる

前述の通り、土地の貸借に関する一時金等は必要になるものの、購入費用については「建物部分のみ」となるため、住宅ローンの借入れ額を少なく抑えることがえきる点も定期借地権ならではのメリット。近年の物件価格高騰により希望するエリアでの購入を諦めていた方や、自己資金がまだ潤沢ではない若い世代の方も、予算を抑えながら便利な立地にマンションを持つことができます。もちろん、住宅ローン減税等の税制優遇措置も受けることができます。

■メリット③ 土地部分の税金が不要になる

土地を借りることで、土地部分の「固定資産税」や「都市計画税」が不要となるため、マンションを所有する際に発生する税金負担を軽減することができます。なお、土地の税金を支払うのは所有者である地主です。

■メリット④ 契約期間が長い物件が増えている

近年の定期借地権マンションは、残存期間約70年など、借地期間が長く設けられた物件が増えています。仮に30歳で契約した場合、借地期間が満了となる70年後は100歳。これなら、結婚、出産、子育て、シニア期・・・と、これからライフステージが変化しても十分暮らせるだけの期間があります。

■メリット⑤ 途中で売る・貸すこともできる

転勤・転職・Uターンなど、ライフスタイルの変化によっていつかマンションを手放すことになるかもしれません。その場合も所有権マンション同様に、中古物件として売却したり、賃貸物件として運用することができます。ただし「借地権の譲渡」に関しては地主の承諾が必要になるケースが多いため、契約時に内容を確認しましょう。なお、賃貸運用を行う場合、毎月の地代を経費として計上することも可能です(詳しくは税理士・会計士など専門家に相談を)。

■メリット⑥ エンディングが確定しているため明確な出口戦略を立てられる

マンションの法定耐用年数は47年とされており、一般的な所有権マンションでも築40年を経過すると「建替え検討」に入るケースが多く見られます。国交省の調査※2によると、マンション建替え決議時の平均築年数は単棟型で37.7年、団地型(複数の棟が集まる物件)で43.5年。ただし、建替え決議には区分所有者の5分の4の合意(今後制度改正により要件緩和予定)が必要となるため、調整には大変な労力がかかります。

しかし、定期借地権付きマンションなら「解体して更地に」というゴール地点がはっきりしているため、建替え等の議論を必要とせず、計画的なマンション管理・修繕が可能となります。また、契約者にとっても「定年を迎えたタイミングで売却する」「住宅ローン完済後は賃貸として運用していく」「ずっと手放さずに子や孫へ継承する」など、ゴール地点に合わせて資産運用の出口戦略を立てやすくなります。
※2:国土交通省 マンションを取り巻く現状について

今後のライフプランと照らし合わせながら購入検討を

近年は、初めて購入したマンションでずっと永住するのではなく、ライフステージの変化に合わせて「住まいをどんどんステップアップしながら住替えていく」という志向の方が増えています。その点、初期の購入費用を抑えつつ、便利な立地にマンションを購入できる定期借地権物件であれば「住まいのステップアップの第一歩」としても堅実な選択のひとつとなります。メリットと注意点をそれぞれしっかとり理解した上で、ご自身のライフプランと照らし合わせながら、定期借地権付きマンションの購入を検討してみてはいかがでしょうか?

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