良好なマンション運営に欠かせない管理組合・理事会とは?理事長や役員の役割も知っておこう!
マンションの美観や機能を保ち資産としての価値を維持していく上で、最も大切な要素のひとつが「管理」。分譲マンションでは、区分所有者全員で「管理組合」を結成し、マンションの建物や敷地、付属施設の維持・管理・保全を行います。つまり、マンションを買うということは、自動的にそのマンションの「管理組合の一員」になることを意味しており、マンションの良好な管理に努めることが組合員の義務となります。そこで今回のジオプラットでは「管理組合・理事会の役割」と「理事長や理事会役員になったら何をするのか?」について解説します。
管理の主体となる組織が「管理組合」、理事長や役員は区分所有者全員から選出します
多くの分譲マンションでは、管理業務を委託された「管理会社」が、建物や敷地の清掃、保全、防犯管理、コンシェルジュ対応などを行ってくれるため、入居者が直接管理業務を行うことはありません。しかし、管理会社の管理体制が適切かどうかを見極めたり、管理・修繕にかかる経費の収支確認を行ったり、マンション内の課題を取り上げて解決に導くなど、管理活動の主体的な存在となるのが、区分所有者全員で構成された「管理組合」です。
しかし、課題が生じるたびに組合員全員が集まって話し合いを行うわけにはいきません。管理組合の業務を速やかに遂行するために組合員の中から理事長や役員が選ばれ、月に1回程度のペースで「理事会」が開かれます。理事長や役員の選出は立候補や推薦もありますが、多くの場合は輪番制となっており、数年ごとの持ちまわりで就任します。
理事会の私物化を避けるために、殆どのマンションで役員の任期は2年以内とされており、任期1年のマンションが約6割ともっとも多くなっています。また、役員に選任された場合、辞退は可能ですが、管理組合を公平・公正に運営するためにも、やむを得ない理由がない限りは辞退しないほうがよいでしょう。
理事会の役員になったら何をする?役職とそれぞれの役目を知っておこう
理事会の役員に選出されると、役員の中から「理事長」「副理事長」「防火管理者」「監事」等が選ばれます。
●理事長
理事会および管理組合の「代表」であり最も大きな権限を持つ役職。総会での決議を実行し、課題が挙がった場合は管理規約に則って組合員が納得できる決議を下します。また、毎月積み立てを行っている管理・修繕費の収支や管理組合の口座残高等に不審な点がないかを確認、口座の通帳や印鑑の管理を任されるなど責任は重大です。ただし、通帳や印鑑の管理については、管理会社が代行して行う場合や、理事長とは別に「会計」の役職が設けられる場合もあります。
●副理事長
理事長の補佐役。万一理事長が体調不良等で職務を遂行できなくなった場合は、理事長代行として職務にあたります。
●理事
理事会での役職を持たない役員。定例の理事会に参加し審議を行います。組合員の代表として業務を執行する役割があります。
●防火管理者
50人以上が暮らすマンションの場合、消防法によって防火管理者の選任が義務付けられています。防火管理者に選ばれると、国家資格である「防火管理者資格」を取得するため、2日間の講習を受けることになります。また、マンション内の消防設備点検・整備・維持管理が適正に行われているかについても確認を行います。
●監事
理事会の役職者が適正な業務を行っているか、組合の財産管理に不正はないかなど、中立的な立場で理事会の監査を行う役職です。理事会役員ではあるものの理事ではなく、理事会の議決権もありません。また、監査の結果不正が発覚した場合は臨時総会を開く権限があります。
管理組合の最終意思決定は「管理組合総会」で行う
理事会の役員にならなければ、特に何もすることが無いように思われますが、実はそうではありません。月に1回程度開催される「理事会」の内容は議事録としてまとめられ、各住戸に配布されます。議事録の中には共用設備の故障や設備の更新、組合が加入している保険内容の見直し、管理費の滞納状況など「いまマンションの中で起きている管理上の課題」が随時報告されているため、組合の一員として必ず目を通すようにしましょう。
なお、そうした課題を受けて、管理組合の今後の方針を決定するために開催されるのが、最終意思決定の場となる「管理組合総会」です。総会には定期(通常)総会と臨時総会の2つがありますが、年に一度の定期開催となるのが「定期(通常)総会」で、理事長が総会の招集通知を行います。
一方、通常総会以外で、緊急の案件がある場合に開かれるのが「臨時総会」です。臨時総会は理事長や監事だけでなく、組合員(議決権総数)の5分の1以上の同意があれば招集できます。
●定期(通常)総会
その期の決算報告や理事会の活動報告のほか、来期予算の審議、役員の選任についての決議を行います。決議には下記の2種類があります。
●臨時総会
任期中の辞任等により新たな理事の選任が必要になった場合や、緊急で共用設備の大掛かりな補修が必要になった場合、大規模修繕の業者選定や計画内容の見直しなど、一度の総会では決めきれないような大きな議題がある場合に臨時開催されます。
●普通決議
総会で提示された一般的な議案について「区分所有者の過半数」および「議決権の過半数の賛成」が得られれば可決となります。なお、管理組合の定めにより過半数の決議要件が緩和されている場合もあります。
●特別決議
管理規約の変更や、共用部の更新、老朽化した建物の建て替えなど、マンションの機能が大きく変更されるような議題を審議する場合は「区分所有者数の4分の3以上」および「議決権の4分の3以上の賛成」が必要となります。ただし、建物の建て替えは重大な案件のため「区分所有者数および議決権の5分の4以上の賛成」が必要です。
一人ひとりが管理組合の一員としての責任を自覚すると「資産性」をより長く維持できる
いかがでしたか?ちょっと面倒に感じることも多い管理組合や理事会役員ですが、他の人に任せっぱなしにしていると、自分が知らないうちに毎月の管理・修繕費が上がったり、必要なコンシェルジュサービスがカットされるなど、マンションの暮らし心地が大きく変わってしまう可能性があります。「管理組合の一員であること」を一人ひとりが自覚し、マンション管理に対して関心を持つようになれば、マンションの美観や機能を良好な状態で維持しやすくなり、結果的には10年後、20年後の「資産としての価値」をより高めていくことにつながります。「マンションは管理で決まる」という言葉を念頭に置きながら、管理組合総会にも積極的に参加するよう心がけましょう。