マンションのエアコン設置、
取り付ける前に確認しておきたい注意点とは?
気象庁の統計によると、日本の夏(6月~8月)の平均気温は100年あたりプラス1.28度の割合で上昇しており、年々猛暑日や熱帯夜が増加傾向に※1。夏のシーズンを健康的に乗り切るためには、もはやエアコンが不可欠な存在となっています。中でも、これから夏本番が近づいてくるこの時期は、来る暑さに備えてエアコンの増設や高性能機種への買い替えを検討する方が増える季節でもあります。そこで今回のジオプラットでは、マンションでエアコンを取り付ける前に知っておきたい注意点について解説します。
※1 気象庁 気温の変動より
家庭用エアコンは大きく分けて「壁掛け」と「天カセ」の2種類がある
マンションに設置できる家庭用エアコンには、大きく分けて2つの種類があります。一般的に広く普及しているのが「壁掛け」タイプ。メーカー・容量・機能など多彩な商品ラインナップが揃っており、本体価格や設置工事費が安いこと、取り付けや取り外しがしやすいことなどの特徴があります。
一方、通称「天カセ(天井カセット)」と呼ばれているビルトインタイプのエアコンは、「ハイグレードマンション」などで採用されることが多い設備。天井の構造上、後付けが難しいことから既に新築時に設置されているケースが多く、エアコンの本体費用は分譲価格の中に含まれています。天井面にエアコンを埋め込むため視界の邪魔になりにくく、お部屋の開放感やインテリアのデザイン性を高めてくれる効果がありますが、クリーニングなどのメンテナンス費や故障時の修理代が高くなるというデメリットがあります。
エアコンを買う前にチェックしておきたい5つのポイント
近年の新築マンションでは、基本的にすべての「居室」にエアコンが設置できるよう設計されています。ただし、注意したいのはサービスルームやDENといった居室として認められていないスペース。こうした空間には、エアコンを設置するための配管が通っていないことが多く、取り付けが難しい場合があります。「いざ入居してみたら、エアコンを設置できない部屋だった」というトラブルを無くすためにも、以下の5つのポイントを確認しておきましょう。
■ポイント① 壁面にエアコンスリーブ(配管用の穴)が開いているか?
エアコンを設置できる居室には、必ず壁面に「エアコンスリーブ」と呼ばれる配管用の穴が開いています。この穴に配管を通してエアコン本体と室外機をつなぐことになるため、万一エアコンスリーブが見当たらない場合はエアコン設置が難しくなります。また、エアコンを設置する場所からエアコンスリーブまでの距離が離れている場合は、配管が長くなるため取り付け費用が割高になる場合があります。
■ポイント② 室外機を設置するスペースがあるか?
室外機はエアコン本体の容量によって大きさが異なります。通常はバルコニーに室外機置場が用意されていますが、中には、奥行きの狭いサービスバルコニーや、天吊りタイプの室外機置場が設けられていることもよくあるため、サイズや重量が適合しているか?の確認が必要です。特に、共用廊下側にエアコンスリーブが開いている場合は要注意。共用廊下にはみ出して大型サイズの室外機を置くと、避難経路の妨げとみなされ、管理組合から撤去を求められる場合もあります。
■ポイント③ エアコン用コンセントは何ボルトか?
エアコンを取り付ける壁面には、必ずアース付きのコンセントが設置されています。しかし、よく見るとコンセントの容量が異なっており、100Vと200Vの2種類があります。12畳を超えるようなリビング・ダイニングなど、広い部屋ではパワーの大きなエアコンを取り付ける必要がありますが、万一コンセントが100Vだった場合は故障や発火の原因になります。エアコンを選ぶ前に必ずコンセントの種類・容量を確認しましょう。なお、100Vから200Vへのコンセントの変更は工事によって対応可能です。
■ポイント④ 契約電流のアンペア容量は適正か?
エアコンは容量が大きいほどパワフルな冷暖房効果を期待できますが、そもそも電力会社との契約電流の容量が足りていない場合は、エアコンを使用するたびにブレーカーが落ちてしまうなど不具合が発生します。分電盤を開いてアンペアを確認し、万一30A以下だった場合は契約の見直しを行ったほうが良いでしょう。なお、一般的な住戸では40A以上、ファミリータイプの住戸なら50A以上が理想的です。
■ポイント⑤ エアコンを設置する壁面の配管スペースは足りているか?
新築マンションへ入居する場合、事前に図面から寸法を測って家具や家電を揃えておくケースが多くなります。しかし、意外にも寸法の読み間違いをしがちなのが「壁掛けエアコンの面積」について。エアコン本体と室外機をつなぐ配管は、本体の「横」から出ているもの、「下」から出ているものなど、メーカーや機種によって形状が異なるため、本体サイズだけを確認して壁面収納家具等を購入してしまうと配管スペースが邪魔になり、せっかくの新しい家具を置けなくなることがあります。エアコンを取り付ける壁面のまわりは上下左右に約10cmの余白を残し、家具配置にゆとりを持たせましょう。
エアコン設置が難しい場合はどうしたら良い?
近年の新築マンションは、在宅勤務の定着を受けて小さな書斎スペース(DEN)が用意されていたり、テレワークスペースとしても使える大型納戸が登場するなど、間取りの多様化が進んでいます。しかし、前述の通り「居室ではない空間」にはエアコンスリーブやエアコン用コンセントが設置されていないことが多く、エアコンの取り付けが難しくなります。こうした空間では、工事不要で持ち運びができる「ポータブルクーラー」を活用しましょう。スポットクーラー、冷風機などメーカーによっても名称が異なりますが、スタイリッシュな小型のデザインも多く、3万円程度からと購入しやすい価格帯になっています。
ポータブルクーラーは一般的なエアコンと同じ仕組みになっており、取り込んだ空気を本体内部で冷却して送風します。「排気ダクト式」と「ノンドレン式」の2つのタイプに分かれますが、窓のないDEN等で使うのであれば、排水を手動で行うノンドレン式がおすすめです。また、共用廊下側に面した居室で室外機を置くスペースが足りない場合は、室外機不要の「ノンドレン式窓用エアコン」を取り付ける方法もあります。
エアコン設置工事を行う際は管理組合への届け出が必要
築年数が経った中古マンションでは、リビング以外の居室にエアコンスリーブが設置されていない物件も多く見られます。しかし、壁面に勝手に穴を開けてエアコンを取り付けるのはNG。マンション壁面は、たとえ専有部の壁であっても「区分所有者全員の共有物」となるため、管理組合の特別決議で許可が下りない限り、勝手に工事をすることはできません。
また、エアコンの取り付けや取り替えの際は、荷物の搬入・搬出、工事業者の出入り、場合によっては共用部の養生などが発生するため、事前に管理組合への届け出が必要になります。引っ越しと同日にエアコン取り付けを行う場合はその旨を報告。また、エアコン取り付けが別日になる場合は「何日前までに管理組合への届け出が必要か?」を確認しておきましょう。
まとめ
いかがでしたか?ひとことで「エアコン取り付け」と言っても、様々な事前準備が必要となります。一戸建てと違って、マンションでは共同住宅ならではの設置マナーがあるほか、築年数の違いによっても工事内容や予算が変わってきます。改めて管理規約に記載されている注意点を確認し、本体と室外機のサイズ・電気容量等をしっかりチェックした上で、「快適な夏を過ごすためのエアコン設置計画」を検討してみましょう。