転職する前に知っておきたい、住宅ローンを借りるなら「転職前」と「転職後」、どちらが良い?
ひと昔前までは「一度企業に就職したら、定年まで勤め上げるのが当たり前」とされてきました。しかし、総務省統計によると就業者における転職希望者の割合は年々増加しており15.3%(2023年統計)※に。また、転職希望者が最も多い世代は、男女ともに25歳~34歳となっており、「マンション購入の適齢期」と合致します。そこで今回のジオプラットでは、転職をする前に知っておきたい「転職を考えている人が住宅ローンを借り入れるタイミングの注意点」について解説します。
※参考:総務省統計局 直近の転職者及び転職等希望者の動向について P4
https://www.stat.go.jp/info/kenkyu/roudou/r5/pdf/21siryou4.pdf
住宅ローンを借り入れるときに「審査される項目」とは?
以前のジオプラット記事でもご紹介しましたが、住宅ローンの審査は、借り入れが可能かどうかを金融機関へ打診する「事前審査」と、住戸の売買契約後に行われる「本審査」の2回の審査があります。
※参考記事:https://geo.8984.jp/mansion/tokyo/plat/lifestyle/7146/
利用する金融機関によって審査項目は異なりますが、主に「事前審査」では下記の項目が審査の対象となります。
【事前審査の主な項目】
●借入時の年齢と完済時の年齢・・・金融機関が定める年齢制限に見合っているか?
●年収と返済負担率・・・額面収入に対する返済割合が健全か?(一般的には30~35%が目安)
●勤続年数・・・原則1~3年以上勤務しているか?(ただし、勤続年数の基準を定めていない住宅ローン商品もある)
●個人信用情報・・・キャッシングやマイカーローンの借り入れ、返済延滞等がないか?転職回数が多すぎないか?
一方「本審査」では、事前審査の結果に加えて下記の項目が審査の対象となります。
【本審査の主な項目】
●健康状態・・・「団体信用生命保険(団信)」に加入できる健康状態にあるか?(だたし、団信加入が必須ではない住宅ローン商品もある)
●申告内容の虚偽・・・勤務先が変わった、年収が変わった、他社での新たな借り入れが増えたなど、事前審査の申告内容に虚偽がないか?
審査項目のうち、転職を考えている方が特に注意したいのは上記の赤字部分です。なお、最近は「勤続年数」よりも「完済時年齢」や「返済負担率」が重視される傾向にあるため、ネット銀行等を中心に勤続年数基準を定めない住宅ローン商品も増えています。こうした審査項目を踏まえた上で「転職前」と「転職後」、どちらのタイミングで住宅ローンを借り入れたほうが良いかを考えてみましょう。
「転職する前」に住宅ローンを借りる場合のメリットと注意点

「転職前」に住宅ローンを借り入れる場合、現在勤めている会社の勤続年数や額面収入が審査の対象となるため、完済年齢・返済負担率・個人情報に問題が無ければ、スムーズに審査に通りやすくなります。この点は転職する“前”に借り入れる大きなメリットです。ただし、以下の点に注意が必要です。
【転職前に住宅ローンを借りる場合の注意点】
●事前審査と本審査の間で転職をする場合
事前審査を終えてから本審査までの間に転職し、勤務先が変わると「勤続年数が短すぎる」という理由で本審査に落ちてしまうことがあります。また、勤務先企業の安定感や信用度も審査基準のひとつ。特に、会社から独立してフリーランスになった場合や、転職先企業の規模が前の勤務先よりも小さくなった場合は、「収入の安定性」に対する審査が厳しくなります。そのため、実際の転職タイミングは「本審査→融資実行→物件引渡しを終えたあと、一定期間が経過してから」のほうが望ましいでしょう。なお、転職後は速やかに借入金融機関に対して「勤務先の変更届」を行います。その届け出によって融資条件が変わることは原則としてありません。
●転職によって家計バランスが変化する場合
転職後は様々な「想定外」が起こります。例えば、年収はアップしたものの賞与の割合が大きく、月額収入が転職前よりも減ってしまうケースや、働き方が変わったことでタクシー利用・外食などの出費が転職前より増えてしまうケースでは、家計の収支バランスが大きく変わります。せっかく手に入れた住まいを手放すことにならないよう、転職後の「想定外の支出」を考慮しながら、堅実な家計シミュレーションを事前に行っておきましょう。
「転職した後」に住宅ローンを借りる場合のメリットと注意点

「転職後」に住宅ローンを借り入れる場合、新しい勤務先での年収や家計の収支バランスを見極めた上で購入検討できる点が最大のメリットとなります。ただし、転職して間もない場合には、以下の点に注意が必要です。
【転職直後に住宅ローンを借りる場合の注意点】
●勤続年数が足りないと判断されることがある
最近は「フラット35」をはじめとして、勤続年数が審査の対象にならない住宅ローン商品が増えています。ただし、大手銀行では1年以上、ネット銀行では3ヶ月以上などの基準を定めているケースも多いため、住宅ローン商品の選択肢を広げたい場合は、極力「転職直後の借り入れ」は避けるようにしたほうが無難です。
●転職回数が多すぎる場合
金融機関によっては、勤続年数だけでなく「転職回数」を審査の対象としている場合があります。転職回数については申込書類での自己申告のほか、個人信用情報からも調査されます。「短期間での転職回数が多すぎる」と判断されると、「安定収入が見込めない」という理由で審査に落ちてしまうことがあるため注意が必要です。ただし、上場企業へのキャリアアップなど、転職のたびに年収がどんどん上がっている場合は、転職歴が多かったとしても審査への影響は少ないようです。
転職後のライフプランに沿って、無理のない計画を立てることが大事
いかがでしたか?「さらなるキャリアアップを目指して転職する」「未経験の別業界へ転職する」「独立してゼロからスタートする」など、転職には人それぞれに様々なストーリーがあるため、一概に「住宅ローンを借り入れるなら、転職“前”が良い、“後”が良い」と結論付けることはできません。しかし、どのような転職であっても「暮らしの場=住まい」は絶対に無くてはならない自分の居場所であり、転職後の新生活を支える大切な基盤となります。まずは“住まい購入後の住居費が、転職後の家計バランスに見合っているか?”シミュレーションした上で、今後のライフプランに沿って「借り入れタイミング・借り入れ予算」の計画を立てるようにしましょう。