列車運行の安全性や、
街の賑わい創出につながる高架化工事
神戸方面へも大阪方面へもアクセスしやすい阪神青木駅。長らく続いていた阪神電鉄の高架化工事が完了し、また高架駅となる青木駅は新たにエレベーター・エスカレーターが設置され、バリアフリーに配慮した駅へと生まれ変わりました。今回は阪神電気鉄道株式会社の神農大輔さんに、高架化事業内容や街にもたらす役割などについて伺いました。
- 阪神電気鉄道株式会社
都市交通事業本部
工務部施設課 - 神農 大輔さん


- 青木駅の高架化工事について教えてください。
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当社が神戸市と共に進めている連続立体交差事業。この事業は、阪神本線住吉駅東方と芦屋駅西方の約4.0kmの区間を、地上の線路から高架の線路にすることにより、11か所の踏切を廃止する一大プロジェクトでした。
この計画が決定されたのは1983年(昭和58年)にさかのぼります。踏切により南北に分断された市街地の一体化や交通渋滞の問題の解消を目的に、神戸市からの調査依頼があったことが発端ですが、当社としても踏切をなくすことで電車が自動車や歩行者と接触する事故の発生をなくせるといったメリットがあるため合意。平成9年に神戸市と基本協定を結びました。
魚崎駅を境に以西区間、以東区間という呼び方をしていますが、以西区間を先に着手してここが平成17年に工事が完了。平成19年からは以東区間を本格的に着手し始めました。現在、高架化工事は完了し、神戸市による側道の工事が行われている最中で、2025年度中には完了予定です。 - 高架化工事では印象に残っていることはありますか?
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私はこの工事に約6年間携わりました。前述した通り、プロジェクトが計画されたのは私が子どもの頃というずいぶん前の話で、私が関わった時点ですでに進行していたものですから、まずは過去の経緯や資料の掘り起こしから始めるのが大変でした。 日々の業務では、工事費の積算や事業主体の神戸市の担当者との協議などをメインに行い、東灘工事事務所に通い詰める毎日。無事に高架切り替え工事が完了できたのも、長期にわたって沿線のみなさまにご協力いただいたおかげと大変感謝しています。
工事全体としてはまだ完了していませんが、高架化を完了したことに関しての達成感はもちろんあります。長い間工事をしていたのがついに完成したというところで、地元の方にとってもうれしく思っていただけたらありがたいですね。
- 新しくなった青木駅について教えてください。
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阪神電車の駅舎は地元の特徴を取り入れひとつひとつ個性があるようなデザインにしています。連続立体交差事業で新しくなった青木駅は亀、深江駅は海をデザインに取り入れています。
なぜ青木駅が亀かというと伝承からなんです。東灘区にある保久良神社の祭神である椎根津彦命が、青亀=あふぎの背に乗って青木の浜に漂着したという言い伝えがあり、それが青木の地名の由来になったそうです。そこで駅の玄関口の青色は、「青木」の地名の由来である青亀と海のイメージから青色に。駅の連続したデザインは先ほどの神様が漂着した白砂青松の砂浜や打ち寄せる波をイメージして白を基調としています。壁には甲羅からイメージした格子状のデザインを取り入れているのも、実はあまり知られていないポイントです。
ちなみに、阪神電車のホームにある待合室のガラス絵柄の中には、その駅にちなんだ隠し絵があります。青木駅は亀がこっそりと描かれているのでぜひチェックしてみてください。 - 青木という街にはどんな印象をお持ちでしょうか?
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静かな住宅街という印象を持ちました。あとは住宅街の中にも個人がやっているようなお店が点在しているなぁと思いました。
工事期間中に足を運んだのは、青木駅からすぐ近くの「炭火焼肉松久」。精肉店直営の焼肉店でおいしかったです。
海の手にある複合施設「サンシャインワーフ神戸」も、レストランや電化製品のテナントが入っていて便利そうだと思いました。 - 今後、青木の街がどのようになっていくことを期待しますか?
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側道の完成を2025年度中に予定しています。以前と比べるとすごくきれいになっていきますので、その辺を見て地域の方たちが「すごく街が良くなったな」と思っていただけたら1番うれしいなと思います。
青木だけの話ではありませんが、今後少子化が進んでいくことが予測されます。そこで今回のように阪神沿線にマンションができることにより、ファミリー層をはじめとする人たちが増えて、街全体に活気や賑わいが生まれてくることを期待しています。