ブルームギャラリー
窪山氏へのインタビュー
淀川のほど近く、新北野にある「ブルームギャラリー」。
「ブルームギャラリー」の運営をはじめ、さまざまなカタチで写真を
未来に届ける窪山洋子さんにお話を伺いました。
Profile
ブルームギャラリー窪山 洋子 氏
ブルームギャラリーについて
写真表現の面白さと多様さを楽しむ場所として「ブルームギャラリー」を2009年より運営しています。
レンタルギャラリーではなく、「今このタイミングでこの作品を見てほしい」という作家を選び、作品展示や販売をしています。
新北野エリアでギャラリーを始めた理由は、簡単に言えば「いろんな縁が重なって…」ですが、OL時代に学んでいた写真学校の先生の紹介で、当時この場所で商業写真家として活躍されていた60代の写真家さんと出会い、場所を引き継ぐ形でギャラリーを運営することになりました。
当時はまだ20代後半だったので、場所を持つことへの憧れとやる気、そして体力や勢いもあって2009年に未経験でギャラリストとしての仕事をスタート。
1年間は、前オーナーの写真家さんの伴走もあって、写真やギャラリーの実務を学びながら試行錯誤しながら運営していました。
このようなドタバタ劇で写真ギャラリーを始めたので、最初の3年ほどは、作家さんと対話しながら展覧会の企画やイベントを考えることが多く、この初期の経験が今思うと「ブルームギャラリーらしさ」につながっているのかなと感じます。
写真に対する想い
「写真との出会い」という意味では、OL時代に祖父のカメラとアルバムを譲り受けたことが一番のきっかけといえます。
ギャラリーで展示するような作家さんの作品とはまた違う、身近でどのご家庭にもありそうな家族写真や日常写真が私にとっての写真の入り口です。
現在、ギャラリーを運営しながら地域での写真プロジェクトや写真を残す活動をしている理由は、「身近な写真にも価値があり、文化として次世代に残したい」と思っているからです。
私は、運良く祖父母が保有していた写真やアルバムを受け継ぎましたが、私が生まれる前に祖父は亡くなっており、祖父と直接あったことはありません。
でも写真の中の祖父とは沢山出会っている。
そんな関係性だからこそ、祖父が持っていた写真やアルバムは、祖父との思い出ではなく、もう少し客観的な視点で見ており、写真に映っているもの、時代背景、地域の風習など、何気ない光景が写った写真にとても惹かれ、個人の思い出以上に、地域や日本の文化としての写真の価値を感じています。
デジタル時代だからこそ、サイズ感や質感、厚みなどを感じられる写真プリントやアルバムは、手触り感のある思い出として魅力があります。
昨今、終活ブームなどもあって、紙焼き写真やアルバムなどの思い出の品をどう減らすかが大きな課題となっていますが、大切なものは、ちゃんと「カタチ」で残す。
その仕分けのサポートする人材やしくみが、今求められているように感じます。
地域との関わり
ギャラリーを始めた2009年、知り合いを通じて淀川区役所主催のイベントにお声がけいただき、子ども向けの夏休みのワークショップを3年間企画運営しました。
その後、淀川区で活動している「淀川で淀川から~わいわいネットワーク」メンバー3名と一緒に、2018年から地域の写真を保存箱(ボックス)に残していく活動「記憶のボックス・アーカイブ」をスタート。
活動で使う保存箱は、仕事でよく使っている写真保存用の中性の箱で、私は保存箱に祖父から譲り受けたバラ写真を入れて保管していました。
その箱を見たメンバーの一人が、「家の中の写真も残したいけど残し方が分からない、整理したいけど正直億劫、この箱に入れておくだけで安全に写真を残せるというのは、気持ちがとても軽くなる。」そう言っていただいたことがとても印象的で、「大切なものは、ここの中にあるんだよ」という簡単な写真整理方法を広めることが思い出を未来に残す第一歩だと気づきました。
ちなみに、海外では写真が資料として図書館や公文書館、美術館等に保存され、市民が閲覧できる仕組みがあります。
日本ではまだそのような写真の共有化は積極的に行なわれているとはいえず、一般の方が目に触れる機会は少ないです。
団体や個人が保有する 記録性の高い街の思い出は、一人で持つよりもみんなで共有する方が大事です。
地域の中で分散されている地域の写真を「記憶のボックス・アーカイブ」の活動を通して集め、区ごとや年代ごとに分類し、例えば十三エリアであれば淀川図書館に最終的に保管するなど、地域の人や専門家が閲覧できる環境づくりができれば、今以上に地域の文化が豊かになり、共有財産として残っていくと思います。
この保存箱を使った地域の思い出アーカイブは今後積極的に展開していきたいと思っています。
写真の整理を楽しめる「まちの写真屋さん」
私は、フィルムカメラとデジタルカメラの転換時期に学生時代を過ごしました。
当時はフィルムを写真屋さんに持って行き、どんな写真が撮れただろう?と、出来上がりを楽しむワクワク感が写真屋さんにはありました。
時を経て、2020年に何十年ぶりかに街の写真屋さんに行きました。
プリント受付機を使って自分で操作するのですが、写真の転送やレイアウト作業など、注文の段階でアタフタとしてしまいました。
さらに残念なことに、出来上がってきた写真も思っていた仕上がりと違い、ダブルでショックを受けて帰った経験があります(後日談として、写真の仕上がりは私の設定ミスだったということが判明…)、その苦い経験もあり、街の写真屋さんの存在意義をあらためて考えるようになりました。
その後、コロナ禍のギャラリーの営業自粛や出産が転機となり、2023年に一念発起で「写真整理とプリントのお店」をスタートさせました。
ライフワークとして「写真をカタチとして残したい、プリント文化を残したい」と強く想うようになったのが主な理由です。
デジタル・スマホ時代の今、膨大な写真データが手元にありながらも「残したい写真を選べない」という写真選びの難しさが現実としてあります。
写真には、人と人、時代とのコミュニケーションを促す面白さがあります。
アナログとデジタルの良さを生かしたハイブリットな写真の残し方を提案することで、広大な写真の海から残したい思い出を丁寧に掬い、カタチとして未来に届ける。
十三を拠点に様々な人と関わりながら、活動を展開できればと思っています。
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